成年後見制度とは

 高齢者や障害のある方などで、判断能力が十分でないため、財産管理や介護、施設の入退所などの契約、遺産分割などの法律行為を自分で行うことが困難であったり、悪徳商法などの被害に遭う恐れのある方がいます。成年後見制度は、このような方の(十分でない)判断能力を補い、本人が損害を受けないようにし、本人の権利をまもるための身近な制度です。

 成年後見制度には大きく分けると、法定後見制度任意後見制度があります。

法定後見制度

 判断能力が十分でなくなったときに、本人や配偶者、四親等内の親族などが家庭裁判所に必要な書類をそろえて手続き(申立て)を行い、家庭裁判所が適任と思われる援助者(成年後見人等)を選びます。成年後見人等は、本人の意思を尊重し、福祉や生活に配慮しながら、本人に代わって、財産の管理や福祉サービス等の契約をします。また、制度利用後に本人が行った不利益な契約を取り消します。

 法定後見制度は、判断能力に応じて「成年後見」「保佐」「補助」の3つに分かれます。要件などを整理すると次のようになります。

欠格条項の見直しについて
 令和元年6月の法改正により、医師、税理士、法人役員、公務員など、数多くの資格・職種等の法律に規定されていた欠格条項が見直されることとなりました。この改正により、成年後見制度(後見類型・保佐類型)を利用していることを理由として、資格等を一律に制限するのではなく、資格等にふさわしい能力があるかどうかを個別に審査、判断する仕組みへ見直されることとなりました。
 なお、「会社法」と「一般社団及び一般財団法人に関する法律」における取締役、監査役、理事、監事についても、令和3年3月の法改正により、欠格条項が見直されました。
申立てまでの流れ
制度の利用が適当かどうかを検討します
権利擁護相談、成年後見制度利用相談をお受けしています。
申立人を決めます
本人・配偶者・四親等内の親族など
(身寄りのない方は区市町村長)
成年後見(保佐・補助)人候補者を検討します
配偶者・親・子、その他の親族
第三者後見人についてはご相談ください。
申立て区分を決めます
成年後見、保佐、補助の3つの類型があります。
必要な書類をそろえます
成年後見制度利用支援
・申立て書類の提供や記入方法
家庭裁判所に申立てをします
※本人の住所地の家庭裁判所
【申立てに必要な費用】
印紙等、約1万円。その他診断書料や住民票発行手数料がかかります。また、鑑定を行う場合は、別途鑑定費用(約10万円程度)が必要です。
※詳細は、こちら(東京家庭裁判所「後見サイト」)をご覧ください。

申立て後の流れ
家庭裁判所に成年後見(保佐・補助)開始の申立て
※申立て後の取下げは家庭裁判所の許可が必要です。
審判手続き
・事情聴取(申立人、候補者)
・本人調査
・親族への意向照会
・鑑定
成年後見(保佐・補助)開始の審判
後見人等や援助内容などを決定します。
※申立てから1~2カ月程度
審判確定
後見登記

成年後見監督人

 家庭裁判所は、成年後見(保佐・補助)人に対する指導・監督の役割を担いますが、本人の財産状況その他により、より細やかな助言が必要な場合には、成年後見監督人を選任することができます。

後見人等の報酬について

 後見人等が選任された後、後見人等は家庭裁判所へ定期的に後見事務を行い、本人の財産から報酬を受け取る申立てをすることができます。報酬の金額は、後見事務の内容や本人の財産状況などから家庭裁判所が決定します。また、家庭裁判所が成年後見監督人を選任した場合は、後見監督人の報酬も必要となります。

〇基本報酬額のめやす(実際の額はケースごとに家庭裁判所が報酬額を決定します。)

<管理財産額> <後見人報酬> <後見監督人報酬>
1千万円以下 2万円(月額) 1~2万円(月額)
1千万円超
~5千万円
3~4万円(月額)
5千万円超 5~6万円(月額) 2.5~3万円(月額)

 

後見制度支援信託・後見制度支援預貯金について

 ご本人が後見類型で、後見人が管理する本人の流動資産が多額である場合には、後見制度支援信託または後見制度支援預貯金の利用検討を行います。
 ご本人の財産のうち、日常的な支払いのために必要な金銭を預貯金等として後見人が管理し、普段は使用しない金銭を信託財産または特別な預貯金として金融機関が管理する制度です。その払い戻しや解約をするには、家庭裁判所の指示書が必要となります。

 

任意後見制度

 判断能力が確かなうちに、将来、判断能力が低下した場合に備えて、どのような援助を、誰にお願いするのか(任意後見人)を自分の意思であらかじめ決めておくことができます。それには、公証人が作成する公正証書で契約(任意後見契約)をする必要があります。
 判断能力が十分でなくなったときに、家庭裁判所に開始の申立てをします。任意後見監督人が選ばれ、任意後見が始まります。

 

手続きの流れ

本人の判断能力があるときに

①任意後見受任者の選任
 任意後見人は自分の判断能力が低下した時に、自分に代わって財産管理等の事務を行う人です。信頼できる人を選び、じっくりと信頼関係を築くことが必要です。親族や友人の他、弁護士・司法書士・社会福祉士・税理士・行政書士などの第三者の専門家に依頼することもできます。

 

②公証役場で任意後見契約を締結
 自らが選んだ任意後見人に、自分の生活、療養看護及び財産の管理のため、これらに関する事務についての代理権を与える契約(任意後見契約)を公証人が作成する公正証書で締結します。

 

本人の判断能力が低下し支援が必要になったら

③家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立て
 本人の判断能力が低下しているため、任意後見人の事務処理が適正に行われているかどうかを監督する任意後見監督人の選任が必要になります。本人や配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者が、家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てを行います。任意後見監督人の選任により任意後見契約の効力が生じ、任意後見人としての活動が始まります。

 

任意後見制度利用に関する費用について

 任意後見制度の利用には、①公正証書の作成、②任意後見監督人選任申立て、③任意後見人、任意後見監督人に対する報酬などについて費用がかかります。詳しくは、公証役場へお問い合わせください。

①公正証書の作成
・任意後見契約書作成料 11,000円
・登記嘱託手数料 1,400円
・収入印紙代 2,600円
・その他、証書代、登記嘱託書郵送用切手代など
②任意後見監督人選任申立て
・収入印紙代 2,200円
・郵便切手代 3,270円
・その他診断書料や住民票等発行手数料
③任意後見人、任意後見監督人に対する報酬
・任意後見人の報酬 契約で定めた額
・任意後見監督人の報酬 家庭裁判所が定めた額
・その他、後見事務にかかわる諸経費